カラダカフェ 初回の記録

カラダカフェとは

体についての雑談です。今回は、手塚夏子が オーストラリアとの交流企画 でやった作品「私的解剖実験-3 リクエストバーション 」の話を軸に、体の不思議を語り合います。

 オーストラリアの方々と対話して出てきたキーワードは「STATE(状態)」でした。「 私的解剖実験-3 リクエストバーション 」私自身の深層へ影響を与えるような、体への命令によって、存在の「状態」を変化させる試みです。
 しかし、見てくださる方々にとって、この「命令」と「体」の関係が見えづらい、「体に何が起きていのるか」を感じ取りにくいということが問題としてハッキリと見えてきました。そこで、もっと感じ取れる「命令」というものはないだろうか、そのことをこの雑談を通して考えていきたいと思います。

〈日常的な体の経験を思い出す〉
感触の記憶にはどんなものがあるだろうか?思い出すだけで、体に「キタキタキタキタ」と感触が広がってしまうような記憶。例えば、奥歯にモノが挟まって、なんとか舌をつかって取ろうとするんだけどなかなか上手くいかない時の感触や、足指間のゴミをとるときの感触、耳を誰かにかいてもらう時の耳奥の感触、自分の手がおばあちゃんのしわくちゃの手に包まれる感触、ゴハン粒が鼻に入りそうになってしまった時の感触、紙で指を切ってしまった時の感触、などなど、他にも色々な話が出ました。 また、上司や先生などの前にいる時、苦手な人と話さなくてはならない時、赤ん坊の前にいる時などなど、関わりに関することでも、胃が上がってくるような感じ、胃が縮み上がるような感じ、お腹が柔らかくなって目尻が下がってしまう感じ、などなどいろいろな体の感触があると思います。 出産を経験した方は、産むときの、赤ん坊の体の触感など記憶されているでしょうか?私は、足が最後に出るときのヌルっとした感触を忘れることができません。

〈実験〉
酸っぱいモノを食べたときの体と、甘いモノを食べたときの体はどのように違うか、観客の皆さまも実際に口に入れて実験してみましょう。まず、酸っぱいモノの代表として、うめしばをみんなで一斉に口に入れます。観客のそれぞれの方に感想をお聞きしたところ、
肘先やふくらはぎに何か突っ張るような感触がある方、
乳首がしびれるような感じの方、
目に来るという方、
その他色々な体の感覚、反応がありました。次に甘いモノの代表として、チョコレートを一斉に口に入れます。また感想をお聞きしたら、
肩のあたりが暖かくなる方、
お腹のあたりが柔らかく広がる感じという方
などなど様々で、皆さまとても真剣に体に耳を澄ませてくださり、有意義な実験となりました。

〈イメージ〉
体の中に意識を持つ方法として、イメージの力を使ってみましょう。 西田留美可さんは、昔スイカを食べるときに、うっかりタネを食べてしまい、「このタネがお腹の中で発芽して、朝起きたとき、おはよう!と言った瞬間口の中から蔓が飛び出してくるのではないだろうか」と思いドキドキしたという思い出話をしてくださいました。それから、医療の現場で、悪い細胞をパックマンがパクパク食べてしまうというイメージをすることによって、症状が改善するということもあるそうですね。また骨盤が赤くなるとイメージするのは難しくても、赤いパンツをはいていて、その色がお尻に染み込んで来るとイメージするだけでお腹の感じが変わるかもしれません。そんな感じで皆さんにイメージや記憶を使った、感じやすい命令を考えていただきましょう。
観客の皆さまが考えた命令に、私が集中しやすいよう少しだけ推敲したものが以下になります。


・全ての髪の毛の毛根がふくらんでいく。
・心臓が誰かの体に移植される。
・胃の中に入った種が発芽する。
・肩甲骨から羽がはえてくる。
・右手から左手まで魚が泳いでいくことをイメージする。
・揚げ物が胃に落ちた感じをイメージする。
・右耳の下に蚊がとまった。
・右の肩から温かいお湯を身体の中に注がれる。
・青竹踏みが足裏に埋め込まれている。
・左手の甲に熱湯がかかってヤケドでひりひりする。
・涙が身体の中を流れる。指先から涙がしたたる。
・お腹の中の氷がだんだん溶けていく。
・目の玉が下に引っ張られて足につく。
・奥歯にすきま風が吹く。
・「へそのお」母親の方に向かって伸びていく。
・足の裏が暖かくなって、うずうずする。
・体中の毛がいつも休まず伸び続けている。
・自分の座った座布団の重みに耐える(座布団になったイメージ)。
・水底に足をつけるイメージ。
・右の靴下がデニムになる。
・くるぶしがクルクル回転することをイメージする。
・体の中が空洞で水が入っている。
・前頭部の中で夕陽が輝く。


〈パフォーマンス〉
観客の皆さまに書いていただいた、これらの素晴らしく感じやすい命令のカードを使ってパフォーマンスを行います。私が立っている前にカードを全て並べて、観客の皆さまが好きなタイミングで好きなカードを私に見せます。私の体はその命令に従います。とても集中しやすいものもありましたが、難しかったのは具体的なイメージで、例えば日常的なイメージは、私自身「手塚夏子」という素に戻ってしまいそうになる。そうすると、深層にうまく影響を与えて状態を変化させるのが難しくなります。しかし、見ている観客の皆さまにとっては、命令を読みながら自分もその感覚を体の中に持ってパフォーマンスを観ることが出来るようで、パフォーマンスしている側との共感できる領域がとても深くなったと感じました。カフェで色々な雑談をしてきて、体に耳を澄ませて、この時間に結晶したと思います。皆さま本当にありがとうございました。